[8.3 sat] 初めましても、お帰りなさいも、リベンジも――EPOCH STAGEの7組が魅せた灼熱のステージ魂

今年で3回目の開催となる『ジャイガ OSAKA GIGANTIC ROCK FES 2019』(通称『ジャイガ』)。本日のEPOCH STAGE1発目を飾るのはシンガーソングライター・キタニタツヤ(以下、キタニ)だ。ボカロP“こんにちは谷田さん”名義の活動をはじめ、プレイヤー、作詞・作曲家、アレンジャーとしても評価の高い彼。そんなキタニの叫びにも近いベースヴォーカルと共に、サポートの陶山良太(g/Plot Scraps)、佐藤ユウスケ(ds)が鳴らす重厚なサウンドのもとに続々とオーディエンスが集まり、クラップが巻き起こる。ベースを置きハンドマイクでキタニが自由に躍り出た『夢遊病者は此岸にて』『Sad Girl』ではヴォーカリストとしてもオーディエンスを魅了し、まさにその才能とポテンシャルを遺憾なく発揮。聴いている人間の心をえぐり取るような歌詞とは裏腹に、ゆらゆらと揺蕩う妖艶なキタニの姿が光り、楽曲の世界観がより一層と濃厚に、どっぷりと押し寄せてくる。そしてラストの『悪魔の踊り方』では、彼らのグルーヴが炸裂! 終演後に聴こえた恍惚の溜息とも取れる客席の反応を観れば、どれだけのエネルギーが発せられていたかがよく分かる。まさに今年の『ジャイガ』の幕開けにふさわしいアクトとなった。

photo by 森 好弘

 

続く2組目は、愛媛県出身の3ピースバンドLONGMAN。さわ(b&vo)の喉の不調による活動休止を経て、昨年の『ジャイガ』で復活のステージを踏んだ彼ら。そんな3人が再び立つEPOCH STAGEには、確実に昨年よりも多くのオーディエンスが待ち構えていた。「LONGMAN! 始まるよ!」(さわ)と、定番の『Opening』から『WITH YOU』と鳴り響き、巨大モニターに映されたほりほり(ds)のポンジュースTシャツは今年も健在!(笑) そして、さわ&ひらい(g&vo)の掛け合いが何ともキュートな『1919』で客席に拳の花が咲き乱れ、確実に成長を遂げたLONGMANにしか生み出せない多幸感が会場を包み込んでゆく。シンプルで軽快な『BEER!』後のMCでは、『ジャイガ』連続出演に対する喜びと、ライブ前にひらいが水着ギャルの動画を観て精神統一を図っていたという裏話が飛び出す(笑)。後半戦は真っ直ぐなメッセージが飛び込んでくる『Back Home』、『Loking back』と続き、コール&レスポンスが突き抜ける一体感はまさに野外フェスならでは。『Excuse』でスカダンスが入り乱れた際にはステージ上の彼らの笑顔もさらに輝きを増し、観ているこちらもグッとくるものがあった。ラストは『IN THIS WAY』、『WALKING』を続けて贈り、来年の再会を願いながらステージを後にした。 

photo by 松本いづみ

 

太陽がちょうど真上に差し掛かる午後――。バンドメンバー全員が“No Name”を名乗る素顔を仮面で隠した謎のバンド、Xmas Eileenが灼熱のEPOCH STAGEに降り立った。「ハナから俺らはまともちゃいまっせ!!」(vo右)、「いくぞー!!」(vo左)と、赤と緑のクリスマスカラーのマイクをアイコンにしたヴォーカル2人を中心に、パフォーマンス、ベース、挙句の果てにはDJ&マニュピレーターと、次々とメンバーがステージで縦横無尽に暴れだす。本当、何者なんだ、この人たちは(笑)。1発目の『Kiss me Kill me tonight』から客席全員を彼らの轟音の渦の中へ連れて行き、『Escape to paradise』ではパフォーマーと一緒に腕を上下させる振付で、さらに一体感を増していく。「僕らはオマケみたいなもんですけど、オマケはオマケなりにきっちりライブします!」(vo右)と、ぶち込まれたのは彼らのアンセムと言っても過言ではない『BAD BOYS BE AMBITIOUS』! 最後にはマスコットキャラクター・ベリールードくんも応援に駆け付け、全員でヘドバンをするという超ロックなのにめっちゃ平和な光景が生まれた(笑)。イロモノバンドとは言わせない実力と圧巻のパフォーマンス。「愛してるぜ、ありがとう!」とボーカル左が放った一言が、今日のステージの全てを物語っている。

photo by 森 好弘

 

リハーサルから熱い盛り上がりを見せたSurvive Said The Prophetの始まりは、静かに鳴り響くSEから。観客が期待に心躍らせる中、Show(ds)、Ivan(g)、Yudai(b&vo)、Tatsuya(g)、最後にYosh(vo)が登場。「大阪ー!!」(Yosh)と叫んだかと思えば、『TRANSlated』が投下され、Yudaiのデスボイスに重なる低音の轟音の渦の中、Yoshが歌い進めるにつれ皆がステージ前に押し寄せ、思い思いに飛び跳ねる。パフォーマンスの一挙一動も見逃さないかのようにステージ上で彼らが天高く指差せば、拳を突き上げれば、オーディエンスもそれに続く。「楽しいことだけやってる人生が一番我儘なら、俺たちは世界一子供だ。お前らも子供だ! HONDAのCMの曲やります(笑)」と、今日この場に集まっている音楽好きの人間へ最大のリスペクトとともに、清涼剤となる『Right and Left』を贈る。『When I』ではIvanが持っていたシェイカーを投げ、それに続いてYoshも歌いながらピックを飛ばそうとするも2回とも失敗に終わるという微笑ましいシーンもありつつ(笑)、『Network System』でリフレインされるサビコーラスの合唱に、彼から満面の笑みが零れる。幾度となく「ありがとう」を告げ拳を天高く突き上げる姿に、Survive Said The Prophetというバンドの未来を観た気がする。

photo by 森 好弘

 

潮風が心地いい時間帯に差し掛かり、満を持してlocofrankが登場! 「先輩(=KEMURI)が寄ってきたから、最高のスカパンクの後は最高のメロディックパンクでいこうや!」(木下正行・b&vo。以下、木下)と『START』がかき鳴らされるやいなや、同時にモッシュが巻き起こり、後方から来た観客も我先にと一気に駆け寄っていく。昨年20周年を迎えた彼らが鳴らすバンドサウンドは、人生の酸いも甘いも味わってきた3人にしか出せない、シンプルでありながら重く、心地よい響きを持ってステージから伝わってくる。披露された新曲『Beyond the epilogue』には、さらに走り続ける意志と覚悟すら感じさせ、オーディエンスもそれに応えるように手を大きく振る。「俺たち大阪に住んでるんだけど、こんなパラダイスがあるなんて」(木下)と、雨バンドの自分たちを出演させてくれた心意気への謝辞を述べ、「わざわざ来たんや。チケット代以上のものを君たちで作って帰れよ!」(木下)と、客席に向かって投げかける。西陽に照らされ汗だくになり、妙齢の男性が全力で音楽を鳴らしている姿は、素直にとても格好いい。歳をとっても、大画面のアップに耐えられなくても(笑)、まだまだ彼らが音楽を鳴らし続けてくれることに、多大なる謝辞を贈りたい。

photo by 森 好弘

 

「どうも! WANIMAで~す! Def Techの後にやるとは思ってませんでしたー!」(庵原将平・vo&b。以下、庵原)と、スタンバイしながらおどけて観客の心を摑んできたのは、長崎発の3ピースバンド・SHANK。最高のサンセットを視界に会場中のオーディエンスが待ってました!と言わんばかりにEPOCH STAGEに集まる。矢継ぎ早に攻め立て「踊って帰ってね」(庵原)と、『Life is…』、『Movie』を投下。爽快なサウンド&リズムに合わせてジャンプ、スカダンスが繰り広げられていく景色は、まさに壮観。日中の疲れがピークに達していてもおかしくないが、なぜか自然と身体が動いてしまうのは、彼らが持つ音楽の力だろう。「勘のいい人は気付いてるかもしれないけど、WANIMAじゃないです(笑)」(庵原)と、きちんと訂正をしてからは『Take Me Back』が贈られる。彼の無邪気な笑顔からは想像がつかないハスキーなシャウトが会場に響き渡れば、松崎兵太の骨太なギター、池本雄季のどっしりとしていて軽快なドラミングがそれを追随し、会場の空気は一気に彼らのものになる。他に『620』や『Wake Up Call』など全12曲のラインナップで挑んだ今回は、曲が変わるごとに歓声や拍手が、客席前方ではモッシュが巻き起こる、幸せの連鎖が生み出されたステージとなった。

photo by 森 好弘

 

太陽が完全に沈み、空を薄雲が覆うEPOCH STAGE。ラストを飾るのは、昨年の『ジャイガ』で機材トラブルに見舞われたにもかかわらず、素晴らしいパフォーマンスで見事オーディエンスの心を摑んだLAID BACK OCEANだ。ステージ上にはストライプ状に光る照明と、やはりあの便器(笑)。そしてKAZUKIのギターカッティングが心地いい『DEFY』からスタート。YAFUMI(vo)のウィスパーボイスで惹きつけたと思いきや、轟く轟音の渦に合わせてステージが赤く染まる。はっきりと顔は見えないが、それぞれの楽器の音、歌声が、研ぎ澄まされた五感にビリビリと伝わり、曇天の舞洲に溶け込む彼らだけの空間が作り出されていく。「調子はどう? We are LAID BACK OCEAN!!」(YAFUMI)の声に応え、闇夜に多くの手が上がり、ビートの波に乗ってYAFUMIの歌声が泳いでいく。『STAN DREAMS』では先のGIGANTIC STAGEにてステージを終えたばかりのUVERworldより、誠果(sax)がスペシャルゲストとして登場! これには客席もさらに大きく沸き、彼らが紡ぐ音楽でまた私たちを新しい景色へと連れて行ってくれる。最後に「叶えたかったあの夢は、形を変えて今もまだ続いているんだと思います」と、YAFUMIがメッセージを込めて披露したのは『Million』。今度ははっきりとLAID BACK OCEANの顔が観える。逆に観えなくなるほどのまばゆい光に包み込まれ、EPOCH STAGE1日目は幕を閉じた。

photo by 森好弘

 

 

Text by 松川沙織