おいしくるメロンパン

寡黙に真っ向からぶつかる…、その潔さに痺れた…。

8/4 SATYUMESHIMA STAGE

どう考えても、夏フェスは踊らす騒がす様に煽るバンドが盛り上がるのが目に見えているし、それは何の間違いでも無く素晴らしい事だ。だからこそ、敢えて自分たちのペースを変えず、真っ直ぐぶつかっていくバンドを観ると、その武士のような潔さに見入ってしまう。おいしくるメロンパンは『RO69JACK2016for ROCK IN JAPAN FESTIVAL』で優勝した実力派バンド。スリーピースならではのミニマムなサウンドであり、涼しげさも持ち合わせている。1曲目「look at the sea」の前も特にバンド名も名乗らず、淡々と演奏し始めた。

続く「水葬」では、よりゆったりとしたサウンドで、自然に観客たちが横揺れになっていく。3曲目「シュガーサーフ」では振り子を逆に振りきるかの様に、一気に激しいサウンドを畳み込む。そして、「あの秋とスクールデイズ」とつぶやき、そのタイトル楽曲が演奏されたのだが、途中「情けないな」というリフレインが続く。こんな楽しくて明るい夏フェスで、そんな歌詞をずっと呪文の様に唱え、しまいには、それがシャウトに変わる。呆気にとられていた観客から、徐々に拳が上がっていく様子は、かなりの痛快感があった。もちろん音楽性の良さが一番だが、こんなふてこい寡黙なバンドがいるのは頼もしい。

ラストナンバー「nazca」を前に、ようやくバンド名紹介があり、この日初めての長いMCに入るが、ボーカルのナカシマではなく、ベースの峯岸翔雪が話す。「今日は本当に嬉しいです。僕らは、こうやって先輩とやる機会が増えてきてますが、まだ安心しちゃいけない。自分たちのやりたい音楽をやって、どこまで突き詰められるか…。ある種、そんな信念を形にできたのが、先月出したミニアルバムで、その僕らから出てきた音で来月ライブをします。今日チケット持ってきてますので、ライブに来て下さい」。静かに、でも強く語りかける何の無駄も無いMC。夏フェスでワンマンのチケットを持ってきてますなんて言われると胸がキュンキュンしてしまう。当たり前の事だが、バンドはフェスやイベントに年中出まくった上で、一番大切にして、一番力をぶちかますのがワンマンライブである。今日目撃した人も、そうでない人も、何かしら、このレポートを読んだ人は9月20日(木)心斎橋CLUB QUATTROワンマンライブを是非とも目撃して欲しい。

Writer:鈴木淳史、Photo:森好弘