Nulbarich

片道切符の旅は続く。Nulbarichが魅せた“音楽を自由に楽しむ”極上のステージ

8/4 SATMAISHIMA STAGE

初日のMAISHIMA STAGE2組目に姿を現したのは、今や音楽好きの人間の間で大注目を浴び、昨年に続き今年もフェスやイベントに引っ張りだこのNulbarich!

ステージによって変わる本日のメンバー編成は、ギター×2、ベース、ドラム、キーボードの布陣。サウンドチェックから楽器隊の爽快な演奏で1曲ほど通したかと思えば、JQが姿を出さないままヴォーカルチェックで何と『Ordinary』を披露してくれた。全ての持ち時間を集まった観客とともに楽しむという心意気が伝わってくる、贅沢な35分の幕開けとなる。

 

そして、拍手が巻き起こる中、何事もなかったかのようにスルッとJQが登場(笑)。

「Nulbarichです。よろしくお願いします! いやもう溶けちゃうね。溶けないように」(JQ)

 

と、“溶けないように”のワードをそのまま演奏に乗せてアドリブで遊び歌う。それに応えるように自然と観客席から手が挙がる中、本編1曲目に放たれたのは『Follow Me』だ。

サビの途中を“ジャイガ I wish この場所が消えないように あとは空まかせ”と嬉しいフレーズを挟んでくれたのは、聴き間違いではないと思う。

 

会場が心地よい横揺れに包まれ、ステージを左右に闊歩していたJQが定位置に着き、ドラムのカウントで『It’s Who We Are』が奏でられる。終始笑顔が絶えないツインギターがそれぞれに遊びだしたかと思えば、ベースがうねり、大地に響き渡る壮大なドラム始まりが耳を惹き付ける『Kiss You Back』で、どんどん聴衆の心に静かに、そして確かに攻め入ってくる秀逸な曲展開を観せてゆく。

 

続いてロック魂も垣間見えた『In your pocket』は、音の波を泳ぐ浮遊感が実に気持ちいいグルーヴで、客席にも自然と思い思いのウェーブが起こる。キーボードのソロも交えながら、楽器隊がまるで夏休みを満喫する少年のように眼をキラキラとさせて音を自由に楽しむ様は、まさに彼らしか持ち得ないステージだ。

 

そして、一気に彼らの名前をお茶の間に知らしめたと言っても過言ではない『NEW ERA』をドロップ。舞洲の空に吸い込まれてゆくJQの歌声、Nulbarichが鳴らす音楽の何と気持ちいいこと! 中央の巨大モニターに彼らのこぼれる笑顔が映し出されるが、その目線の先にあるのは誰でもない、ここに集まったオーディエンスの最高の笑顔があることは間違いない。

「よかったら1mmも動きたくないと思うんですけど、踊ってみないですか?」(JQ)

 

と、どこか懐かしく華やかなサウンドが心地いい『Zero Gravity』で観客の心と身体を躍らせる。追い打ちを掛けるように『ain’t on the map yet』でクラップを求めたJQは、

 

「一つ聞きたいことがあります。この曲知ってる人? 知らない人? OK、全員揃いました。歌える人は歌ってね。知らない人は躍ってね!」

 

と投げ掛け、それぞれの感覚を決して否定も強制もせずに、どんどんと引き込んでいくその姿は、“音楽は自由に”という彼ら自身のスタイルを体現していた。

 

「初めて参戦したんですけど、本当にこのような素晴らしい場所に呼んでいただいてありがとうございます。こんなに暑いのに観てくれてる人、来てくれた人、あざーす!」(JQ)

 

なんておどけてみせる彼のMCはもうおなじみだろう(笑)。しかし、最後に演奏する『Almost There』に込められた想いを切々と伝えるちょっと不器用で真摯な姿にも、否応なく惹き付けられてしまう。そんな不思議な魅力を持った彼の口から発せられた言葉は、

 

「必ずまた会いましょう。会いたい! そうしたい、そうしていきたい!」

彼らの片道切符の旅はまだ始まったばかりだが、音楽を自由に楽しむことへの覚悟と、確かな指標が胸に刻まれているような気がした。

これからのNulbarichに大いに期待し、また彼らの笑顔に会いに行こう。

Writer:松川沙織、Photo:日吉“jp”純平